研究概要 |
物性の基本である結晶型を決定するX線測定を1K以下で行えるところは世界でもどこにもなかったため,金沢大学超低温研究室では自分たちで超低温X線解析装置を開発した。この数年それを用いて低温で現れるいろいろな相転移の研究を行ってきた。X線を用いて,単に低温相における結晶型の決定だけではなく,X線反射ピークの半値幅,積分強度,格子定数などの温度変化を精密に測定することにより,相転移に対する興味ある新しい情報が得られることを見出した。 Nb:Tc=9.23Kの第2種超伝導の代表的な物質である。入射X線の長期的な強度の変化や,測定装置の微小な振動などによるX線反射ピークの半値幅,積分強度,格子定数の微小なぶれを補正して測定をより高精度に行うため,標準試料を試料に混ぜて実験を行っている。これまで低温で標準試料として使える物質がなかったため,標準試料としてSiを用いることにしてその低温でのX線反射ピークをくわしく調べた。NbにSiを混ぜて測定を行ったところ,振動などに起因すると思われるピーク位置のずれをsiのピーク位置により補正することができ,Siを標準試料として使うことができることがわかった。 YBa_2Cu_30_x:層状のCuO_2面を持つ高温超伝導物質。超伝導転移温度Tc=約90Kを持つ試料で積分強度,格子定数の変化が見られた。スピンギャップ温度T^*においてもまた積分強度,格子定数に変化が見られた。 ZnCr_2O_4,Ni_<0.5>Zn_<0.5>Cr_2O_4:構造に起因する幾何学的なフラストレーションを持つ物質。ZnCr_20_4の構造転移温度12K以下で反射ピークに分裂が見られた。またNi_<0.5>Zn_<0.5>Cr_2O_4では20K以下で半値幅が大きく増大した。
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