研究概要 |
本研究予算によって、新たなNMR(核磁気共鳴)スペクトロメータを兵庫県立大学に設置した。この導入によって、最新のパルスシーケンスを用いた測定が可能となり、実験精度が飛躍的に向上した。また、この装置を既存の15テスラ超伝導磁石と組み合わせて、Yb系重い電子化合物を中心に実験研究を行った。著しく大きな電子比熱係数(γ~7.9J/molK^2)を示すYbCo_2Zn_<20>について、静的・動的帯磁率が顕著な磁場依存性を示すことが明らかになり、非磁性-磁性転移近傍にあるYb系化合物に特徴的な振舞いとして捉えられることが分かった。また、神戸大学との共同研究により、多極子秩序系として知られるSmRu_4P_<12>やPrRu_4P_<12>について、これらの物質が示す相転移に伴う対称性低下に関する重要な情報が、Ru-NQR(核四重極共鳴)のスペクトル測定によって得られることが分かった。さらに、兵庫県立大学の独自性を活かした新たな研究領域の開拓として、低次元有機導体の実験研究を開始した。これまで難しいとされてきた微小単結晶試料を用いた測定が、15テスラ以下の磁場下においても可能であることがわかり、(TMTSF)_2X(X=PF_6, AsF_6)がスピン密度波秩序状態の4K付近で示す正体不明な異常に関して知見が得られた。
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