研究課題
磁束渦糸状態の超伝導秩序変数や内部磁場の空間構造を微視的理論から定量的に正しく評価するための計算手法として、これまで準古典理論による磁束渦糸状態の計算方法を開発してきた。この計算手法で超伝導渦糸状態の物性を定量的に解析することにより、非従来型超伝導体の超伝導機構の解明をめざす研究を進めている。今年度は、超伝導渦糸状態についての微視的計算を発展させ、磁化、NMRのスペクトルやナイトシフト、中性子小角散乱強度など各種物理量の磁場依存性の定量的評価のための計算方法の開発を行った。この計算結果と実験データの比較より、超伝導異方性や常磁性効果による効果の定量的評価を明らかにする研究を進めた。特に、CeCoIn5やTmNi2B2Cにおける中性子小角散乱による磁束格子の構造因子の実験データについて理論解析を詳細に行い、その特異な磁場依存性の振る舞いが、主に常磁性効果によるものであることを突き止め、成果を論文発表した。また、Sr2RuO4における面内平行磁場の場合の比熱の磁場依存性についての理論的解析、CeCoIn5のFulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov状態の渦糸状態の空間構造についての計算なども行なった。また、超伝導秩序変数のスピン自由度まで完全に考慮した計算手法の検討を行い、見通しを立てるに至った。スピン三重項のベクトル秩序変数の場合での特異な渦糸状態についての具体的な計算は次年度の課題となっている。今年度は秩序変数の軌道部分の自由度が主要な役割を果たす特異な渦糸状態についての微視的理論計算を先行して実施した。具体的に超伝導対称性がわかっているヘリウム3のp波超伝導状態のA相におけるMermin-Ho渦格子状態についての準古典理論計算に成功し、その渦芯のない特異な渦構造について、微視的理論の立場から空間構造や準粒子構造の評価を行なった。
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Physical Review B 76
ページ: 014503,-1-10
ページ: 064502,-1-7
Physical Review Letters 99
ページ: 167001,-1-4
http://mp.okayana-u,ac.jp/~oka/