研究概要 |
平成20年度は,第一に,Mn_3PtについてTB-LMTO計算を行い,分子動力学計算の出発点として用いる第一原理TB-LMTOハミルトニアン,および磁気力の計算に必要な非磁性状態密度を求めた.このハミルトニアンでは,従来Slater-Kosterパラメーターで取り扱っていた電子の飛び移り積分を第一原理的に求めており,fcc格子の第三近接原子位置までの電子の直接の飛び移りを考慮している.分子動力学計算では,3x3x3個のfcc格子(108個の原子)からなるクラスター9個に周期境界条件を課して,磁気構造を決定する.本年度は,この分子動力学計算を行うためのプログラムをほぼ完成し,現実的な計算時間で磁気構造を決定できるようにするための並列化の検討に入ったところである.本年度実績の第二点は,Mn_3Ptとその類似合金であるMn_3Rh,Mn_3Irについて,LMTO-ASA-GGA計算を行い,これら3つの合金の基底状態における非磁性バンド構造と状態密度を求め,その共通点・相違点を明らかにしたことである.これらの合金のd電子状態はいずれもX点付近で平坦バンドを形成し,そのことを反映してd電子のeg状態密度がフェルミエネルギーE_Fの近くで副ピークを形成することが分かった.Mn_3Ptの場合にはE_Fは副ピークの位置と一致し,一方,d電子数の違いを反映して,Mn_3RhとMn_3Irの場合はE_Fは副ピークの位置より低エネルギー側にずれた位置に来ることが分かった.このことは,Mn_3Ptにおける強磁性相互作用の存在を示唆し,3つの類似合金の中でMn_3Ptのみがコリニアな反強磁性相を実現することが実験で示唆されていることと密接な関連があるものと予想される.詳細は平成21年度の分子動力学計算で明らかにしたい.
|