研究概要 |
RMnO_3における希土類R4f磁気モーメントの影響を明らかにするために、Tbを4fモーメントの影響のない(Eu, Y)で置換し、その混合比を調整することで4f磁気モーメント濃度を制御した。実際には、(Eu,Y)の平均イオン半径がTb^<3+>のイオン半径と同じである(Euo_<0.595>Y_<0.405>)_<1-x>Tb_x。MnO_3(0〓x〓1)を作製し、その電気磁気特性を調べた。得られた相図から(Eu, Y)MnO_3(x=0)に対しTbのドープ量を増加させることで強誘電相での電気分極の方向がα軸方向からc軸方向へと変化していることが分かった。これは、(Eu, Y)MnO_3に対しα軸方向の磁場を印加した場合と同様の振る舞いとなっており、これから、Tb4f磁気モーメントがα軸方向の外部磁場と同様の影響をMn3dスピンに対し与えているものと考えられる。 また、上記の研究と平行して新規マルチフェロイック物質の探索を行った。低次元構造特有のフラストレートした磁気構造に注目し、巨大電気磁気効果を示す新しい磁性強誘電体の開拓を行った。実際には、A_2CoSi_2O_7(A=Ca, Ba, Sr)結晶について良質な単結晶を作製し、誘電率・自発電気分極・磁化・比熱の測定を行った。その結果、Ca_2CoSi_2O7では、c軸(面間)方向に磁場を印加すると二次元面内に電気分極が発現する。Sr_2CoSi_2O7では、磁場をどの方向に印加しても電気分極は発現しないが、磁場を二次元面内に印加したときにc軸(1面間)方向に大きなマグネトキャパシタンスが観測された。このような電気分極の変化を伴わない大きなマグネトキャパシタンスの観測例はあまりなく、Sr_2CoSi_2O7では巨大電気磁気効果の発現機構が従来のマルチフェロイック物質とは異なっていると考えられる。
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