研究課題
交互積層型電荷移動錯体のDMTTF-QBr_nCl_<4-n>は常誘電中性相-反強誘電イオン性相の転移温度がnの増大とともに下がり、n=2で絶対零度付近となる。中性相では量子常誘電相に特有な誘電率の温度変化を示すことが知られている。この量子相転移付近の中性相で光照射すると、電荷移動量に敏感な反射率成分が大振幅でコヒーレント振動することが最近報告された。そのメカニズムを、サイトあたり3状態をとるBlume-Emery-Griffiths模型に量子トンネル項を加えて解析した。多体波動関数に対して時間依存シュレディンガー方程式を解いたところ、量子臨界点近傍で振動の振幅が増大することがわかった。しかしダイナミクスに非線型性は現れず、相転移を誘起しない実験事実と矛盾しない。光誘起相転移では分子密度に比べてずっと低い密度の光子で、電子状態が巨視的に変わるので、光スイッチなどへの応用が期待されている。そのためには絶縁体を光照射して生成した金属状態が高速に緩和することが期待され、強相関電子系では実現している。そこで格子振動の重要性を考え、異なる型の電子格子相互作用を持つ1次元1/2-filled Hubbard模型で、光励起された電子系から格子系へのエネルギー移動率を厳密な多電子波動関数により調べた。通常の電子格子相互作用は電子状態の対称性に関わる点では重要だが、エネルギー移動率は対称性によって大きく異なる。電子間斥力を変調する型の相互作用は平衡状態の性質には効かないが、対称性によらずエネルギー移動に大きく関与する。
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