本研究では、軌道秩序と磁気秩序の共存あるいは競合が重要と考えられる系に対して静水圧力を加えて軌道状態を制御し、そこに現れる磁気的応答を中性子回折法により研究する。また、この研究を通して10GPa級高圧力下単結晶中性子回折実験のための技術開発を行うことも大きな目的の一つである。 平成19年度は、まず、TbVO_3について研究を行い、G型軌道秩序からC型軌道秩序へと圧力による軌道状態の制御に成功し、これに伴って生じるC型磁気秩序からG型磁気秩序への磁気秩序状態の転移の観測に成功した。さらにこの二つの基底状態(G型軌道-C型磁気秩序とC型軌道-G型磁気秩序)の安定化エネルギーは拮抗しており、1GPa付近の転移圧力近傍において2相共存状態の可能性があることが判った。 次に、充填スクッテルダイト化合物PrFe_4P_<12>について研究を行った結果、約2.5GPaで電気多極子極秩序から反強磁性磁気秩序へと秩序パラメータのスイッチングが生じ、この反強磁性相が4.3GPaにおいても極めて安定して存在することが判った。この磁気秩序相の磁気モーメントが2晩であることから基底状態は縮退したΓ_1-Γ_4の擬四重項であり、このため、基底状態には磁気双極子以外にも多数の秩序パラメータが存在することになる。これら秩序パラメータの秩序化エネルギーが拮抗していることが、この物質においては圧 さらに、高圧下単結晶回折実験に最適な圧力媒体の探索を行い、ごく身近な液体であるグリセリンが7GPaにおいても良い静水圧を伝達することを発見した。この実験結果は、高圧下単結晶回折実験を行う研究者にとって貴重に情報になる。
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