共鳴回折実験はランタノイド化合物やウラン化合物の4f、5f電子系における多極子秩序を検出する極めて強力な手法として知られているが、現実的には逆空間全体を走査できないという欠点を抱えている。本研究では、X線構造解析で広く用いられている振動写真法を共鳴回折実験に適用することによりこの問題を克服し、共鳴回折実験による多極子秩序検出の一般的手法を確立するのを目的としている。 平成19年度は、比較的容易な試料として、17Kで磁気相転移を起こすGdPd_2Al_3を用いて測定系の構築・確認を行った。実験では、まず、通常のポイント検出器を用いて、磁気散乱を観測し、その共鳴エネルギー、逆空間での位置、回折強度を確認し、続いて、PILATUS2000という二次元検出器を試料近くに設置し、試料を回転させることにより広い逆空間全体を共鳴回折条件で走査した。 全体として、(1)回折ピークは容易に認識できる、(2)PILATUS2000の特徴であるバックグラウンドとの差を電子的にとるという操作によりS/Nが上がり、さらに識別が容易になる、(3)心配された冷凍容器からの散乱はそれほど気にならない、(4)ノイズの見積もりを行いS/Nの評価ができた、等の結果を得た。ここからバックグラウンドを落とすためのマスク等の導入を行わなくとも、現状で、当初目的とした共鳴回折振動写真法の測定系が構築できたと結論した。f電子系の多極子秩序に対して、特にその秩序ベクトルが不明な場合に有
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