研究概要 |
平成19年度の成果はおもに二つある. 第一に,s12の高階スピンが非一様に分布したパスについて,ケロフ・キリロフ・レシェテキン写像に量子群の結晶基底による表現論的な解釈を与えた.ケロフ・キリロフ・レシェテキン全単射はパスとリッグド配置の間の1対1対応であり,ベーテ仮説法の組合せ論的な類似として極めて重要な役割を果たすことが知られている. パスについて局所エネルギー関数を導入し,テンソル積の左側の成分からの寄与を順次積算していくことによりリッグド配置が決定できることを発見した. この方法はケロフ・キリロフ・レシェテキン写像が再帰的なアルゴリズムにより定義されるのと対照的に大局的な描像を提供するもので,様々な応用,拡張が期待される. 逆写像についての以前の研究成果と併せるとs12の場合にはケロフ・キリロフ・レシェテキン全単射の表現論的解釈が完成したことになる. 第2の成果はs12の高階スピンの結晶基底に付随した周期的箱玉系とその逆散乱法の定式化である.高階スピンでは与えられた状態(パス)が時間発展可能か否か,またその性質が1ステップ時間発展しても持続するかが非自明となる. この点を詳しく分析し,パスのエネルギーの条件に集約した. これにより可換な時間発展とアフィンワイル群の作用で不変なパスの集合を特徴付けることに成功した. 第一の成果で得られたケロフ・キリロフ・レシェテキン全単射を周期系に拡張し,上記にパスに対して初期値問題の解法アルゴリズム,超離散リーマンテータ関数による明示式(キャリアの式も含む),保存量で特徴付けられる状態の数え上げ公式,基本周期等を確立した.
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