今年度のもっとも大きな成果は、ゆらぐ動的事象の協同現象を示す現象について、厳密に議論できるアイデアを提示したことである。具体的には、ランダムグラフ上で定義されたランダム磁場イジング模型の振る舞いを「直感では全く分からない秩序変数」に対する有限自由度力学系によって厳密に記述することに成功した。その方程式の分岐解析に基づいて、ランダムグラフ上の模型については、ゆらぎに関する統計も含めて全ての臨界指数を決定した。また、結果にもとづいて、空間有限次元系の振る舞いについての大雑把な近似を与えることができる。この系の特徴的な現象である、臨界的雪崩現象についての、第一近似理論が出来たことになる。 この結果は、この研究課題の達成点として位置づけられる。昨年度までの成果として位置づけられる「k-coreパーコレーションに付随した動力学」に関する結果も今回の解析からより一般的に導出できるし、動的ゆらぎの解析については昨年度までに培った研究結果にもどつくからである。 また、解析の鍵となるアイデアは、模型の詳細に依存しているわけではなく、あるクラスの模型や現象に対しては有効な出発点を与えている。今後はその発展可能性を検討することが必要であろう。 この結果は、プレプリント(arXiv : 0912.4790)として公表し、学会にて発表した。
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