研究概要 |
量子力学・場の量子論において、ハミルトニアンから物理量の数値計算をする第一原理的方法は極めて重要であり、申請研究課題は、新たな第一原理的な数値計算方法である「確率的状態選択法」の開発である。この方法はモンテカルロ法の原理的改良になっており、従来ではできなかった確率的計算が可能になっている。 平成20年度は制約条件を取り入れた確率的状態選択法を開発して48サイト三角格子量子スピン系の、基底状態および励起状態を含めたエネルギー計算を行なった。 確率的状態選択法は多数の確率変数を用いたモンテカルロ法であるので、一部の確率変数を他の確率変数に従属させることができる。この従属性を用いて、確率的状態選択を適用する状態と特定の状態との内積をどのサンプルにおいても一定にする、つまり統計的揺らぎをゼロにすることができる。この方法-「制約条件付き確率的状態選択法」と呼ぶ-の理論的基礎研究をすすめることができた。具体的には、まず小さなサイズで厳密なエネルギー固有状態を求め、制約条件付き確率的状態選択法を適用した結果と比較検討することによって、本方法の有用性を検証できた。更に、この成果を踏まえて、48サイト三角格子量子スピン系のエネルギー計算をおこなった。この計算ではスピンのZ成分が0の状態の最低エネルギーをもとめるだけではなく、スピンのZ成分が1,2,3、4の励起状態の最低エネルギーの計算もおこなった。これらの計算により、三角格子量子スピン系の基本的性質を調べることができ、この系が自発的対称性の破れを起こしていることを強く支持する結果を得た。
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