研究概要 |
量子力学・場の量子論において、ハミルトニアンから物理量の数値計算をする第一原理的方法は極めて重要であり、申請研究課題は、新たな第一原理的な数値計算方法である「確率的状態選択法」の開発である。この方法はモンテカルロ法の原理的改良になっており、従来ではできなかった確率的計算が可能になっている。 平成21年度は制約条件を取り入れた確率的状態選択法を48サイト三角格子量子スピン系に適用して、いろいろな物理量の計算に適用できることを示すことができた。具体的に計算した物理量は基底状態および励起状態、波数ベクトルをもったマグノンを含めたエネルギー計算と基底状態の副格子の磁化である。 確率的状態選択法は多数の確率変数を用いたモンテカルロ法であるので、一部の確率変数を他の確率変数に従属させることができる。この従属性を用いて、確率的状態選択を適用する状態と特定の状態との内積をどのサンプルにおいても一定にする、つまり統計的揺らぎをゼロにすることができる。この方法-「制約条件付き確率的状態選択法」と呼ぶ-を実用的計算に適用した。具体的には、48サイト三角格子量子スピン系のエネルギー計算をおこなった。スピンのZ成分が0,1,2,3、4の状態の最低エネルギー計算結果により、三角格子量子スピン系が自発的対称性の破れを起こしていることを理解できた。さらに波数ベクトルをもったマグノンを含めたエネルギー計算により、マグノンスペクトラムは線形スピン波解析では理解できず、系の不安性の理解がすすんだ。
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