Hopfield模型にノイズの効果を取り入れた更新の規則と、回路を一部切断した更新の規則を考え、記憶の回復の様子を調べた。ノイズによってのみ記憶が回復する場合のあること、回路を切断するとネットワークにハブが現れ、ハブの更新が記憶の回復にとって本質的であることがわかる。この計算は先行研究との違いを確認するとともに、より大きなシステムでの数値計算が望まれる。 細胞選別の数理モデルに、2次元正方格子Ising模型を経由して等価である1次元のXY模型は、hard-core相互作用を持ち、対生成と対消滅をする粒子のランダムウォークを生成すると考えることができる。確率の保存、定常状態、スピン系の模型に関する既知の結果との関連を議論した。2次元細胞選別の接着確率は、拡張された1次元ランダムウォークの相関関数で書くことができることがわかる。1次元で要素が確率的に移動する現象は、生物の最も基本的な部分でしばしば見られる。遺伝情報からタンパク質を合成するmRNA上のリボゾームの運動は、ASEPとして模型化され調べられている。また神経系や細胞内の輸送を担うキネシンの運動は、Kolomeisky-Fisherにより周期構造を持つ1次元格子上の確率過程として解析されている。これらのいわゆる分子モーターの移動の規則は、一般に、生物系の数理モデルがスピン系のハミルトニアンによって必ず記述されることを示した。各種の実験結果、つまり内部状態、不純物、非一様性、乖離と付着などの現象も、ハミルトニアンに自然に取り込まれる。その結果、スピン系において得られている結果と知られている手法が、生物・生命現象の数理モデルの解析に応用できることが保証される。
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