並進対称性を持つ一様系の量子エントロピーは、臨界点近傍では対数発散を示し、その数値的な評価は難しい。そこで、1次元量子系の基底状態と2次元古典系の熱平衡状態の密接な関連に着目した。量子エントロピーを与える量子系の密度行列固有値は、対応する古典系の角転送行列スペクトルから求められるのだ。2次元古典系が存在する2次元空間に負の曲率を導入すると、並進対称性が変型された格子(双曲タイリング)を考えることができる。この変型された格子上の古典統計モデルは、素早い角転送行列固有値の減衰を示し、相関が局在し易いことが判明した。(論文1)また、相転移は「変型される前に示していた臨界現象にかかわらず」ガウス普遍性クラスに属するか、あるいは1次相転移となった。(論文2)さてここで、双曲変型された2次元古典系に対応する1次元量子系を考えてみよう。そのような系は、最近接相互作用の強さが双曲線関数的に変化して行く1次元格子上のハミルトニアンによって表現される。古典系との類推から、この双曲変型された1次元古典系はガウス普遍性の量子相転移を引き起こす筈である。また、変型の強さを充分に弱くしておくと、非自明な固定点からガウス固定点への乗り移りを示すはずである。より高次元で期待される、このような乗り移り現象が1次元量子系上で実現されるかどうかについて、引き続き研究を進めて行く。
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