研究概要 |
今年度は以下のような研究を実施し、多くの新たな知見を得た。 1.液体カーボンにおける圧力誘起構造変化 カーボン系の融解曲線は高温・高圧であるため実験的に決定するのは困難であるので、第一原理分子動力学シミュレーションにより詳細な融解曲線を決定することは有意義である。これまでに理論的に推測されているカーボン系の融解曲線は融点極大現象を示す。本研究では、Clausius-Clapeyronの関係式と構造の圧力変化、および電子状態の圧力変化から融点極大の起源を解明する。融点極大の起源をミクロなレベルで解明するためには、第一原理分子動力学シミュレーションで得られた結果にもとづく解析が重要である。特に、波動関数および電子密度から計算されるbond-overlap populationや電子密度分布の等高線図などの時間変化から、共有結合性などの電子状態に関する有用な知見を得ることが有効である。本研究により、比較的低圧領域では共有結合的電子状態が、高圧領域では金属的な電子状態に変化することを、明らかにした。 2.液体Snにおける圧力誘起構造変化 高温・高圧下における液体Snの圧力誘起構造変化が特異な性質を示すことがイタリアのDiCiccoらのX線吸収スペクトル実験によって指摘されている(Phys.Rev.Lett.91,135505(2003))。我々は、DiCiccoとの共同研究としてこの圧力誘起構造変化を第一原理分子動力学シミュレーションにより調べ、低圧側では共有結合的なボンド角分布を示しているが、圧力増加とともに金属的最稠密構造に近づいていくことを明らかにした。
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