研究概要 |
長距離電子相関を取り入れた新しい非局所電子相関の動的クラスター理論を完成させる目的で,本年度は,導入された大容量メモリー(16GB)ワークステーションと東大スーパーコンピューターを用いてこれまでの計算精度をさらにあげて,2次元ハバードモデルの中間結合領域(U/|t|=10)における励起スペクトルの運動量・エネルギー依存性を詳細に調べた.その結果,高精度の運動量依存有効質量の計算から,アンダードープ領域におけるマージナルフェルミ液体の存在を確かめた.さらに,この領域で,従来の方法では結論できなかった準粒子のキンク構造が存在することを見出した.また,フェルミ面がドーピングと共にホール的から電子的な形状に移行することを確かめ,これらの振る舞いが銅酸化物超伝導体の多くの異常を説明していることを明らかにした. 第2点として,射影演算子法動的クラスター理論に現れる運動量依存の静的平均値を効率的に計算するために,変分波動関数の改良を行なった.従来のGutzwiller型波動関数は非局所励起に関係する運動量依存の電子相関相互作用が取り入れられていない.その結果,運動量分布関数などの平均値が正しく評価されなかった.そこで,運動量依存の新しい変分パラーメーターをもつGutzwiller型変分波動関数を提案し,これが無限次元で従来の波動関数を大幅に改善することをつきとめた. 本年度実施計画の第3点は,射影演算司法に基づき,繰り込まれた摂動法を越えて,有効媒質の中のクラスター問題をより定量的に解く方法を発展させることである.この方向の研究は現在,今野を中心に試みられ,1つの定式化が行なわれているが,数値計算を行って理論の妥当性を確かめるまでには至っていない.体心正方格子のハバートモデルに基づく金属・絶縁体転移を状態密度を調べることによって考察する。2次元の強磁性寸前の金属の熱膨張についても調べる。
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