研究概要 |
本年度は研究実施計画で述べた通り,非対角有効媒質Σijを導入して長距離電子相関を完全に自己無撞着に取り入れる新しい動的クラスター理論(FSCPM)を定式化した。そして,3次元単純立方格子ババードモデル(half-filling)に理論を適用し,第10隣接原子間距離までの2サイトクラスターを全て取り入れた非対角自己無撞着計算を行った,これらの計算によって,対角成分のみの自己無撞着理論(SCPMO)に比べて,新しく得られた非対角自己エネルギーの振幅が抑えられることが明らかになり,また,励起スペクトル計算可能な領域が,Uをクーロンエネルギーパラメーター,tを最隣接電荷移動積分として,U/|t|<10からU/|t|<20まで拡げられ,強相関領域までの長距離電子相関の効果を調べる事が出来ることが分かった中間結合領域(U/|t|=10)では,準粒子バンド幅はSCPMOに比べてさらに25%縮まり,モットハバードバンドを形成するインコヒーレント励起はk空間のΓ点とR点付近に局在する傾向を示し,その付近で“waterfall"的な準粒子崩壊を示すことが分かった,強相関結合領域では,長距離反強磁性相関に伴うshadowバンド励起を見出し,また,強い反強磁性相関のために,モットハバードバンドは原子的極限から期待される値よりも20%程度増大している事も見出した.さらに,従来の動的短距離クラスター理論(DCA,CDMFT)では金属・非金属転移点Ucは有限であるが,長距離電子相関を取り入れた本理論ではUc/|t|>30となり,Gutzwiller波動関数の場合と同様Ucが存在しなくなる可能性がある事を示唆している.銅酸化物との関連で重要な2次元ハバードモデルの計算は現在進行中で,21年度内に公表予定である.
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