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本研究は自律的な振動子の集団中に何らかの原因により非自律的な振動子の割合が増えていく(これをエイジングと定義する)とき、集団のダイナミックス(特に同期やカオス)がどのように変容するかを解明するのが目的である。本年度は、平成19年度に続いて主に下の1.の課題に取り組み、その成果をある程度まとめることができた。
1.結合振動子系のプロトタイプ的モデルに対するエイジングの効果の包括的解明
(1)大域的拡散結合における非スカラー性の効果:スチュアート・ランダウ(SL)振動子結合系について、拡散結合に非スカラー性を取り入れると、パラメーター平面上の不活性相が増大すること、また、非スカラー性がある程度以上に強くなると様々な一般化されたインコヒーレント状態が現れることを示した。また、ブラッセレーター結合系において、新しいタイプのクラスタリングが起こることを見いだした。(2)固有振動数の分布の効果:SL振動子結合系について、振動子の固有振動数がばらついているときに、引き込み相転移やエイジング転移の境界を解析的にもとめ、シミュレーションの結果とよく一致することを確かめた。(3)局所結合系におけるエイジング転移:1次元SL振動子結合系について、エイジング転移点が系のサイズが大きい極限で、べき則に従って消失するという結果をえた。
以上の結果はこれまで研究されていたモデル系に比べ、より現実的な系に関するものであり、実験との比較や応用の上できわめて重要なものである。2.のエイジングの定義の一般化とその効果の解明については、なお研究を継続中である。
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