本年度は、従来のFourier-Floquet展開法(FF展開法)に代わって、メーラー演算子による時間発展法に基づいて、交差する振動磁場下の一電子原子の擬エネルギー状態を数値計算することと、この結果を基に光吸収スペクトルを求めることを行った。以下に、各項目の詳細を記す。 1.擬エネルギー状態を求める際の定石であるFF展開法では、本来必要となる親バンド以外にサイドバンドの計算が不可避となるので、計算効率の面で無駄が多い。このような欠陥を回避すべく、メーラー演算子による時間発展法を採用することにした。この方法によると、計算すべき状態は親バンドのみなので、比較的小規模な計算で精度よく擬エネルギーを得ることができる。当該の問題にこの方法を適用し、比較的振動磁場の大きさが小さい領域でのデモ計算を行った。 2.上記の時間発展法では擬エネルギーを比較的容易に計算できるという利点があるが、固有ベクトルであるFloquet状態の計算はFF展開法に比べてかなり複雑になる。そこで、直接Floquet状態を計算せずに光吸収スペクトルを求める計算法を考案中である。依然モデルの範囲ながら、メーラー時間発展演算子を数値計算する過程で、直接光吸収スペクトルを計算するコードを開発し、簡単な系で妥当性のチェックを行っている最中である
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