研究課題
天然卵白リゾチームには分子内に4本のSS結合が存在する。これら4本のSS結合のうち全てのCys残基を欠損させたリゾチーム変異体OSSに注目した。また、2本のCys残基を残したリゾチーム変異体2SSと1本のCys残基を残した変異体ISSも精製を行った。これらの変異体はギ酸緩衝液中ではCDスペクトルから判断するとランダムコイルに近い構造である。OSS変異体を残基レベルで解析するためにM9培地で大腸菌の培養を行い、^<15>N同位元素ラブルした変異体を作製し、NMR分光法を用いて測定した。ギ酸緩衝液中ではランダムコイルに近い構造にあるため、分離の良い2次元HSQCスペクトルでさえピークの分散が少なく、またピーク自体も幅広化していた。そこでNMR測定溶媒としてジメチルスルホキシド(DMSO)を用いた。DMSO溶液中ではピークの分散は少ないものの、その線形が鋭くなるため各残基のピークを同定することが可能となった。ピークを同定するためにTOCSY-HSQC、NOESY-HSQC、HSQC-NOESY-HSQCの各3次元NMRスペクトルを測定した。それらのスペクトルを組み合わせて各アミノ酸残基ピークの同定を行った。この同定結果は重水素交換反応速度を求める際にどのアミノ酸残基なのかを識別することに利用する。ランダムコイル状態の残留構造を見るために、重水素交換反応を利用してNMRを測定した。重水素交換反応後、試料を凍結乾燥して反応を停止させ、測定溶媒として易動性プロトンを持たないDMSOを用いた。この方法をもって、ランダムコイル状態にあるタンパク質アミドプロトンの重水素交換反応速度を残基毎に求めることが可能となった。またこの方法は重水素交換中に添加剤を混入することを可能とするので、いろいろな応用に役立つ手法となる。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Proteins:Structure, Function, and Bioinformatics 71
ページ: 737-742
Biochemistry 46
ページ: 3664-3672