研究概要 |
1秒より短周期の地震波形は複雑であり,不均質構造や震源過程を波形を用いて決定論的に逆推定することは一般に難しい.しかし,位相を無視し振幅エンベロープの経時変化に着目することで,構造の不均質性の統計的特徴を求めることが原理的に可能である.本研究では,周波数帯ごとの微小地震波形エンベロープの解析からS波の減衰や散乱特性の地域性,さらには速度不均質の空間分布を求める.ランダム不均質媒質のアンサンブルを考えて統計的に波動伝播を考察することは,短周期地震波の伝播を考える上で優れた方法であるが,未だ限られた条件のもとでの解が得られているのみであり,不均質が非一様な場合や異方性がある場合の考察に取り組む.初年度の研究成果を以下に述べる. 1.地震の波形エンベロープの解析に基づくりソスフェアの非一様不均質構造の解明を目的として,ランダム不均質が空間的に変化する場合に波形エンベロープがどのように変化するかを,数理的に明らかにした[Saito, et. al. 2007, CCP].特に,最大振幅の遅延時間を予測する理論式を導出した[Takahashi, et. al. 2008, GJI]. ガウス型スペクトルで特徴づけられる異方性ランダム不均質弾性媒質におけるベクトル3成分波形エンベロープを,マルコフ近似理論を用いて理論的に導出した[Sato, 2007, IUGG].エンベロープ形状は波線方向に強く支配されることが明らかにされた. 鳥取県西部地震の強震動によって生じた浅い不均質地盤の増幅特性を精密に測定し,地震時の剛性率の低下とその後長期間にわたって継続する回復過程を明らかにした[Sawazaki, et. al. 2007, IUGG].
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