| 研究概要 |
短周期の地震波形は複雑であり, 不均質構造や震源過程を波形を用いて決定論的に逆推定することは一般に難しいが, 位相を無視し振幅エンベロープの経時変化に着目することで構造の不均質性の統計的特徴を求めることが可能である. 本研究では, 周波数帯ごとの微小地震波形エンベロープの解析からS波の減衰や散乱特性の地域性, さらには速度不均質の空間分布を求めた. また, ランダム不均質媒質に非一様な場合や異方性がある場合について, 波形エンベロープ形成の理論の定式化に取り組んだ.
(1)東北日本弧における微小地震の波形エンベロープ解析から, 速度不均質のスペクトル分布を, インバージョン法によって求めることに成功した. また, Markov近似に基づくランダム不均質媒質における波形エンベロープ形成理論に関する総合報告[Sato and Korn, 2008]を執筆した. (2)鳥取県西部地震の強震動によって生じた浅い不均質地盤の増幅特性を精密に測定し, 地震時の剛性率の低下とその後長期間にわ. たって継続する回復過程を定量的に明らかにした[Sawazaki, et.al. 2009]. (3)IASPEIのTask Group on Scattering and Heterogeneityの代表として, 研究成果を書籍Advances in Geophysicsにとりまどめ, Academic Press社より刊行した. (4)固体地球の不均質構造と地震波の散乱に関する書籍"Seismic Wave propagation and scattering in the heterogeneous earth"の改訂版をSpringer社より刊行した.
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