研究課題
「研究実施計画」に沿って、20年度はスロースリップのモデルとして、力学的性質の異なる半無限多1孔質媒質の平面境界に置かれた断層および均質等方無限多孔質媒質中に置かれた非平面形状をした断…層の準静的挙動について大規模な数値計算を実行した。断層を境にして流体の拡散率が異なる場合ついては、論文として今年度末に、国際誌に掲載された。しかし、スロースリップは、多様な時定数を持つ現象であり、一般には、スロースリップイベント、超低周波地震、低周波地震などを総称する。これらを包括的に理解するには、動的なモデリングが欠かせないということが研究計画中に認識されるようになってきた。そこで、「研究実施計画」には明確な記述はなかったが、これまでの研究を総括し、その成果を一歩進めて動的モデルの枠内で、スロースリップのモデル化を試みた。その結果、スロースリップの発生には流体の移動がきわめて重要な役割を果たすということがわかってきた。動的破壊が不安定高速破に転じない理由は、断層面上での空隙生成に伴う流体圧の急激な低下とその結果としての滑り強化による。また、新たに生成した空隙に向かって周りの媒質から高圧流体が流れ込むことにより滑り強化の度合いがゆっくりと弱まり、わずかに滑り弱化となり破壊の成長を助長する。そのため流体移動速度に支配されたゆっくりとした動的破壊成長が起こり得るわけである。これは、スロースリップを動的モデルの枠内でモデル化した、世界で初めての研究例であり、スロースリップの理解に大きく貢献したと言える。
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Journal of Geophysical Research 114
ページ: doi:10. 1029/2008JB005930