研究概要 |
本研究は,反射法・屈折法の本来的な欠点を克服し,高密度探査で取得される反射・屈折法データの統合解析法を確立することである.H19年度は,以下の項目について研究を実施した. (1)高密度屈折トモグラフィのための走時データ作成. 2002年に行われた糸魚川-静岡構造線における制御震源探査データをまず予備的研究として実施し,更に2003年に行われた関東山地東縁における制御震源探査について,得られた膨大なデータから信頼性の高い高密度走時データを作成した. (2)高密度屈折トモグラフィによる精密地震波速度分布決定. 上記のデータに対し,高密度トモグラフィ解析を実施した.その結果,反射面が高角のために通常の反射法では十分イメージングできなかった断層浅部の構造を,地震波速度構造の面から同定することができた.糸魚川-静岡構造線においては小谷-中山断層が高角度の明瞭な速度境界として捉えることができた.また,関東山地東縁測線においては,伊豆弧の境界である藤の木-愛川線も高角度の構造境界として検出できた. このデータについて更に波線追跡法によるForward Modellingを実施した.この解析に先立ち,本研究のような高密度観測に対応できるように波線追跡プログラムを改訂した.この解析では,初動走時の他に広角反射波を用いるため,モデルの信頼性が高まる.その結果,糸魚川-静岡構造線においては,地殻最浅部で高角度であった断層面が,中部地殻では10度程度の低角になることがわかった.また,関東山地東縁測線においては,藤の木-愛川線の深部延長の明瞭な反射面を捉えることができた.また沈みこむフィリピン海プレート上面に対応する反射面をマッピングできた. 以上により,当該地域の詳細な構造が求められるとともに,断層構造や伊豆弧の衝突構造に関わる地質学的に興味深い構造が得られた.
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