研究概要 |
2004年6月23日には非線形な波動特性を持つ微動が約6時間おきに3個発生した.これらの3つの微動を対し,時間遅れ座標系への埋め込み写像を実現するための最小の埋め込み次元の推定とGP法による相関次元推定,及びサロゲートデータ解析による波動の非線形性検証を行った.1Hz以上の高周波成分はかなりランダムな特性を有しているため,微動の低周波成分に対して埋め込み次元と相関次元の推定を行った.埋め込み次元を求めるための最適な時間遅れ値の推定は,高次の自己相関係数を用いる方法を採用し,3つの微動に7〜8次元というほぼ同一の最小埋め込み次元が推定された.また,この埋め込み次元を使って再現したアトラクターから求めた相関積分は,1オーダー以上の範囲で同一の傾きを持ち,安定に相関次元を推定することが出来た.さらに,この解析手法の妥当性を検証するため,Julianの非線形微動モデルを使って微動をシミュレートし,その中のある1次元のデータから最小埋め込み次元の推定と,再構成したアトラクターから相関次元を求め,それらの値が元の力学系の次元と合致し,この手法が有効であることを確認した.リャプノフ指数,Wayland決定値を指標としたサロゲートデータ解析から,これら3つの微動はいずれも非線形な波動であることが明らかになった.さらに,これらの微動はわずか1日の間にほぼ同じ場所で発生することから見て,同一の励起メカニズム(物理過程)により発生している可能性が高い.そこで,これら3つの微動に対して求められた最小の埋め込み次元と最大の相関次元から,微動を励起している力学系システムの次元は3〜7次元の範囲であることが明らかになった. また,KM20 Langevin方程式理論を使った地震波初動や孤立した位相を同定するアルゴリズムを作り,実際の観測データに適用して良好な結果を得た.
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