研究概要 |
2007年度進めた時系列データの再構成状態空間へのアトラクタ再構成による力学系システムの次元推定を,他の波形的特徴を持つ微動データにも引き続き適用して,異なる励起源のダイナミクスに関する制約条件を導き出した.その結果,想定される非線形ダイナミクスの次元は4〜7次元の範囲に収まることを明らかにした.この情報を元に,2008年度は非線形な微動発生源として,弾性的に変形する壁にはさまれた狭い境界を流れる粘性流体と壁の相互作用による自励振動システムを取り上げ,長波近似での数値シミュレーションに取り組んだ.モデルの定式化は既に2007年度に終了しており,その定式化した非線形偏微分方程式系を効率よく解くためのプログラミングを進めている.この問題は,非線形性の強いうえに,壁との相互作用により境界条件が常に変化するため,2008年度だけでは十分な数値シミュレーションの結果が得られなかった.今年度は,計算手法にさらなる工夫を加え,観測データと比較可能となるような様々なケースにおけるシミュレーションを実現し,微動発生の巣売るモデルを確立する.さらに,KM2O-Langevin方程式論に基づく非線形予測手法[Matsuura and Okabe(2001)]を用いるという別のアプローチからの解析も試みた.再構成状態空間へのアトラクタ再構成による解析で用いた微動に対しても,非線形項を加えたKM20-Langevin方程式論に基づく非線形予測を試み,ある特定の非線形項を加えたときに予測値が大きくなる事を明らかにした.この解析では,それに対応する時間差分の光がどの様なものであるかが判るため,この差分項に対応する微分形式もしくは物理過程の推定を,数値シミュレーションに取り込む数理モデルに反映させることで,さらに精度の良いモデル構築が出来る可能性を示した.
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