通常の高速衝突実験では、飛翔体を加速して大きな標的に衝突させる。本研究の特徴は飛翔体を標的に見立て、これをより小さな多孔質小粒子に衝突させる点である。これにより、通常の100万Gを越える加速に耐えられない材質でできた粒子の衝突でどのような現象(本研究では衝突閃光)が起こるかを調べることができる。平成19年度には飛翔体の前面にプライヤープレートを貼り付け、この平面と小粒子との衝突現象を調べる予定で実験準備を進めた。 しかし、平成20年度から、実験に使用するJAXA宇宙研の二段式軽ガス銃が新しい高性能のものに替わった。その際、フライヤープレート付飛翔体の加速は、銃を破損する可能性があるため当分できなくなった。そのため、フライヤープレート付飛翔体に替えて、直径7mmのナイロン球を直径1mm以下のナイロン多孔質体またはナイロン微小粒子に衝突させるよう実験方法を変えることにした。平成20年度は、この新しい実験方法の確立に全力を注いだ。 衝突閃光を測定しようとする際、銃の発射に伴う閃光が邪魔になる。平成20年度は、銃発射に伴う閃光を、光検出器だけでなく分光器でも観測し、なぜ光るのか、どのような場合に強い光が出るのかを調べた。高温になった加速ガスが銃孔内壁などを侵食し、生じたダストが熱せられて発する熱放射が重要であることが分った。 平成21年度には、実験方法が確立し(多孔質微粒子の製作方法が未熟な点などが課題として残っているが)、本研究の目的とするデータが取れるようになった。そして、平成22年度には、質の高い多孔質微粒子の製作も可能になり、順調に実験データが取れるようになった。データ解析の結果、当初予想した通り、衝突閃光の明るさが、多孔質衝突体の場合、緻密なものに比べて10倍上強いことが分かった。また、閃光を発する高温の蒸気雲の形状や光学的厚さに関する知見も得られた。現在、査読付論文執筆中である。
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