研究概要 |
豊後水道に面する2点(愛媛県日振島,愛南町)において,太陽電池とボックスPCを用いた無停電・自動ダウンロードGPS観測システムにより,連続観測を実施した.この地域ではフィリピン海プレートの沈み込み角度と境界の走向が急変し,地殻下部では繰り返しスロースリップイベント(SSE)が発生している.本研究の目的は,国土地理院GPS連続観測網の空間的稠密性を補うことと,SSEに同期した微小変動を直上のGPS観測によって検出することである.2009年終わり頃から約6年振りにSSEの発生が認められ,現在も継続中である.また,本研究で開発した観測システムを別の科研費を用いてインドネシア国スマトラ地方での地殻変動観測にも適用し,低予算で長期安定した観測を行う道筋を示した. 観測と平行し,広域の国土地理院GPSデータを用いた測地インバージョン解析を行った.南海トラフのプレート境界を対象とし,解析範囲をずらしながらインバージョン解析を繰り返し行ったもので,従来の単一の解析に比べ,プレート間固着分布を精度よく推定できた.成果を日本地震学会誌「地震」に投稿し,2010年3月に受理された.また,四国西部の中央構造線を横断して2002-2007年に実施されたGPS稠密観測データの再解析を行い,中央構造線をはさむ南北ブロック間の横ずれ運動,中央構造線における固着分布,九州へっながる広域変動との関連等を明らかにした.形状が急変するプレート境界を忠実に表現するため,新たに三角形要素集合体によるモデル化を行った.成果を日本地震学会(2009年10月,京都市)および日本測地学会(2009年11月,つくば市)において発表した.
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