研究概要 |
マリアナ諸島アナタハン火山は,日本から連なる伊豆・小笠原島弧の南方延長上にあるマリアナ弧に位置し,火山島としては同島弧の最南部に位置している活火山である.長期にわたりほぼ無人の島となっているため火山調査がほとんど行われてこなかったが,2003年5月に有史初の大噴火が発生した.これまでのGPSの調査からマグマ溜まりは島の西方に存在する可能性が高いが,現在の地震観測点が2ヶ所であるため,震源の位置を決めることができなかった.本研究では,アナタハン島にGPS観測点や傾斜計を設置して地殻変動からマグマ溜まりの位置を推定するとともに,地震計を増設して火山性地震や微動の発生源を調べる.またマリアナ諸島のそのほかの火山島のGPS基準点の再測定を実施し,マリアナ弧の運動や火山活動を調査する. 平成19年度の現地調査は2008年1〜2月に実施する予定であったが,2007年12月よりアナタハン火山の火山活動が活発となり,危険性の面から現地調査が不可能となった.活動は2008年3月にほぼ終息したため,同5月に北マリアナ政府危機管理局を訪問し,火山活動の情報収集を行った.その結果を踏まえて同6〜7月に東京大学地震研究所・高知大学と共同でヘリコプタおよび小型船をチャーターして現地調査を行った.アナタハン島内にGPS基準点4ヵ所を設置して繰り返し測定を開始した.また1ヵ所に傾斜計,5ヵ所に地震計を設置して地殻変動および地震活動の連続観測を開始した. マリアナ諸島の6島の火山島のGPS再測定の結果,前回2003,04年の結果と比較することにより,1)火山活動による局地的な地殻変動はこの期間では見られない.2)マリアナ弧の西側にあるマリアナトラフは背弧拡大しており,その速度は北部のウラカスで10mm/年,南部のグアム付近で46mm/年におよぶ,3)拡大のオイラー極は北緯21度付近にあるが,マリアナ弧の北部と南部では微妙に拡大方向が異なる,ことが分かった.
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