研究概要 |
マリアナ諸島アナタハン火山は,日本から連なる伊豆・小笠原島弧の南方延長上にあるマリアナ弧に位置し,火山島としては同島弧の最南部に位置している活火山である.2003年5月に有史初の大噴火が東火口から発生した.これまでのGPSの調査からマグマ溜まりは島の西方に存在する可能性が高いが,詳しいことは分かっていない.本研究では,アナタハン島にGPS観測点や傾斜計を設置して地殻変動からマグマ溜まりの位置を推定するとともに,地震計を増設して火山性地震や微動の発生源を調べた. 本研究で第2回目の現地調査を東京大学地震研究所と共同でチャーターヘリを用いて2009年1月下旬に実施した.5点のGPS基準点にGPS受信器を設置して再測定した結果,アナタハン島の東部が2008年6月の調査以降最大2cm隆起するとともに,南東に約2cm変位していることが分かった.これらは西火口原の下にあるマグマ溜まりの膨張が原因と考えられた.また傾斜の連続観測のデータから,2008年7月の小噴火の10日前から西火口原が隆起する変動観測され,最終的に700μradを超える傾斜となったことが分かった.この事実からも,西火口原の地下にはマグマ溜まりが存在し,噴火活動に呼応して変動していると推定された. また,測地衛星「だいち」のデータを使用して,アナタハン島の干渉SAR解析を行った.しかし,GPS測定期間(2008年6月〜2009年1月)中に衛星軌道が大きく変更になったため,干渉SAR解析からアナタハン島の地殻変動を把握することができなかった.しかし,2008年1〜3月の火山活動時期を挟む時期の干渉SAR解析では火口の周辺に最大20cmの隆起を示す解析結果が得られた.現地調査の結果,この地域には解析された隆起量にほぼ相当する厚さの火山灰が地表を覆っていることが分かった.また層厚が20cm以上になると,データの干渉性が極端に悪くなりSAR解析ができない.このとから,20cm以下の厚さの火山灰であれば,火山灰層の厚さを干渉SAR解析で計測することが可能であることがわかった.
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