研究概要 |
マリアナ諸島アナタハン火山は,日本から連なる伊豆・小笠原島弧の南方延長上にあるマリアナ弧に位置し,火山島としては同島弧の最南部に位置している活火山である.長期にわたりほぼ無人の島となっているため火山調査がほとんど行われてこなかったが,2003年5月に有史初の大噴火が発生した.これまでのGPSの調査からマグマ溜まりは島の西方に存在する可能性が高いが,現在の地震観測点が2ヶ所であるため,震源の位置を決めることができなかった.本研究では,アナタハン島にGPS観測点や傾斜計を設置して地殻変動からマグマ溜まりの位置を推定するとともに,地震計を増設して火山性地震や微動の発生源を調べた.またマリアナ諸島のそのほかの火山島のGPS基準点の再測定を実施し,マリアナ弧の運動や火山活動を調査した. 平成21年度の現地調査は2009年7月1~7日に実施された.東京大学地震研究所と共同でヘリコプタをチャーターして期間中に2往復した.アナタハン島内のGPS基準点5カ所に機器を設置して繰り返し測定を行った.5カ所に設置してあった地震計を撤収して,地震データを回収した.また火山砕屑物の調査も行った. アナタハン島のGPS再測定の結果,島の東部は変形が小さく,島の西側で西向きの変位と沈降が続いており,このことから島西方2km沖の地下5km付近にアナタハン火山のマグマ溜まりがあり,それが現在は火山活動の低下にともなって収縮していると推定された.また地震活動は期間中きわめて低調であったことからも火山活動が終息に向かっていると推定された. また人工衛星データを用いた干渉SAR解析の結果ではアナタハン島の地表の隆起や沈降現象が見られていたが,我々のGPS測定や現地の火山灰調査の結果から降下火山灰層の堆積及び浸食による見かけのものであることが判明した.火山観測には多角的な観測・調査が必要であることがさらに示唆された.
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