反射法探査のように人工振源を用いるアクティヴ(制御振源)探査に対して、自然地震を用いた地下(地球内部)構造の探査はパッシヴ探査(受動振源探査)と呼ばれる。パッシヴ探査は、精度と分解能の点でアクティヴ探査にとても及ぶものではないが、探査深度は桁違いに深い。遠地地震記録の波形を用いて地下の速度不連続面をマッピングし、物性値としての地震波速度の直接抽出する新しい手法の実現を図ることが本課題の目的である。今年度は主にAVOなどにしばしば出てくる非弾性減衰を含む媒質の平面波応答、すなわち平面波領域における波動の計算の問題を扱った。鉛直方向に任意に不均質で減衰を有する媒質の3次元(3成分)粘弾性平面波応答を時間領域で効率良く計算する計算手法を開発した。鉛直方向に任意に不均質な粘弾性媒質の平面波領域における3次元(3成分)弾性波動方程式を導出し、時間領域差分法で解くスキームを開発した、単純な水平成層構造は、propagatormatrix法などの半解析的手法でも解くことができるが、本手法ではさらに複雑な任意の1次元構造が扱える。本法は、空間1次元の格子しか必要ないので、従来の2次元や3次元の差分法を用いる解法と比べてはるかに効率が良い。また、2次元や3次元の差分法で問題となる計算領域の側方境界からの人工反射波も無い、音響波については、同様の手法がBlanch et al.(1998)で提案されており、本研究はその弾性波への拡張と見ることもできる。Blanch et al.(1998)では、さらに平面波領域における効率的な音響波形インバージョン法の定式化と実データへの適用結果についても示しており、本研究は彼らの波形インバージョン手法を弾性波バージョンへ拡張する道を拓いたと言える。
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