研究概要 |
地震発生ならびに断層破壊の伝播挙動が地震断層近傍の応力状態と密接な関係にあるため、地震発生帯の応力状態ならびにその経時変化を知ることは地震発生・断層すべり(破壊)の進展を理解するために重要であり、地震挙動の予測研究に不可欠である。しかし、地下深部の応力の計測は困難で、これまで様々な手法は提案されたにもかかわらず、確実な手法が存在しない。我々は複数の手段を総合的に活用して、それぞれの長所を発揮し、短所を補い、応力を測定することを提唱している。大深度科学掘削を対象として、安価と実施簡便な非弾性ひずみ回復法(A__-nelastic S__-train R__-ecovery,以下「ASR法」とする。)と呼ばれるコア法を中心として、各種応力測定を総合的に研究している。 平成20年度は、実験室での非弾性ひずみ回復のメカニズム解明研究とともに、四国ならびに紀伊半島における陸上掘削におけるASR法の実用的な計測研究等を行った。その結果、有効な非弾性ひずみの測定に成功し、当該地域の応力方向の分布に関する知見を得ることができ、2009年に開催予定の国際会議にて発表することを決定した。また、2008年5月に発生した中国四川大地震の断層掘削プロジェクトにおけるASR法の適用可能性の予備検討を行い、先方と共同研究することに基本的に合意した。2009年にそれを実施する運びとなった。 また、掘削船ちきゅうにおける大深度海洋掘削では、ASR法と補完的なXLOT(Extended Leak-Off Test)という応力測定の孔内実験も行い、有意な結果を得ることができたので、論文を雑誌に投稿して謁載された。
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