研究概要 |
本研究を実施するため,大きく分けて次の3つの作業をおこなう.1:衛星観測からの大気微量成分全球データの収集とその整理,2:オゾン・水蒸気ゾンデなどのデータとの比較・検証,3:大気化学モデル結果との比較・検討.特にここでは,水蒸気を中心とした衛星からの大気微量成分データの収集と水蒸気ゾンデデータ等との比較・検討を通して,信頼すべき水蒸気気候値データを作成する必要がある.本年度はこのうち主として上記1,2の作業をおこなった.具体的には以下の通り. まず,これまでの衛星観測データに関して,提供されるデータの高度範囲,分解能,提供期間などの調査をおこなった.特に2の課題との関係で,比較的新しい期間のデータ検証を優先して,最新の観測期間(2004-)をカバーするEOS/AURA衛星搭載のMLSから得られた水蒸気データを収集した.同時に,熱帯域において近年精力的におこなわれている高精度の水蒸気ゾンデデータを整理して,衛星データとの比較をおこない,データ質の検討をおこなった.その結果,成層圏領域において両者はよい一致を示すものの,上部対流圏ではMLSがドライバイアスを持っていることがわかった. 同時に,熱帯域の水蒸気ゾンデデータ観測にもとづいて下部成層圏における水蒸気混合比の過去約15年にわたる年々変動について調べた.さまざまな変動要因は存在するものの,全体としては増加傾向を示すことがわかった.いっぽう2001年頃以降,衛星から観測される熱帯下部成層圏領域の水蒸気は減少していると報告されている.断片的なゾンデ観測からはそのような減少傾向を明瞭なシグナルとしては捉えにくいが,確かにそのような傾向を見て取ることができた.今後,期間を延長してこういった減少傾向が継続しているのかどうか検証する必要がある.
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