研究概要 |
本年度は,まず平成20年度に実施した世界各地の2スケール雨滴粒径分布パラメータの統計的特性解析の結果を論文化した.また熱帯降雨観測衛星搭載レーダによる雨滴粒径分布推定可能性に関する研究についての論文を発表した.次に,2スケール雨滴粒径分布パラメータの時間変動解析の拡張版として,2次元平面上におけるレーダ反射因子(Z)対降雨強度(R)関係式(Z-R関係)パラメータの変動を2次元確率過程としてモデル化した.そしてこのパラメータを状態空間法により推定するプログラムを開発した.この確率モデルにおいて,Z-R関係のステップ状変化を表す確率密度関数として,2次元コーシー分布やデルタ分布のように,低確率で広い裾野を持つ分布を採用することにより,確率的に定常性が保たれる範囲を自動的に検出し,その範囲でZ-R関係を推定できることをテストデータを用いて確認した.さらに,シンガポールの雨滴粒径分布測定装置(ディスドロメータ)で得られた雨滴粒径分布データをこのプログラムで解析し,Z-R関係が適切に推定できることを確かめた.これらの結果を論文として投稿した.またスマトラ・コトタバンで取得しているウィンドプロファイラデータを用いて雨滴粒径分布パラメータを推定する2周波解析プログラムを開発した.それを用いて,いくつかの事例について雨滴粒径分布パラメータの高度プロファイルを求め,その結果を学会で発表した.これらの研究結果から,雨滴粒径分布パラメータの2スケールモデル化の有効性確認,パラメータの自動推定手法の開発とその手法を用いた世界的な雨滴粒径分布パラメータの特性調査など,当初の目的をほぼ達成することができた.
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