研究課題
大気微量成分の光化学過程・力学による輸送過程を含んだ大気大循環モデルを用いて、中間圏・下部熱圏領域における物質循環について研究を行った。本年度は、大気微量成分の中で、一酸化窒素に注目し、下部熱圏領域での生成と中間圏への輸送に注目し解析した。まず、水平分解能の低い(水平格子点間隔約500km)を用いて、長期間積分を行い、大気微量成分の季節変化や数十日周期の変動を調べた。その結果、下部熱圏における一酸化窒素濃度は、太陽活動やオーロラ活動に伴う高エネルギー粒子の降り込みにより強く影響される。一方、中間圏においては、輸送の効果が重要となり、特に、日射がほとんどない冬季高緯度は、子午面循環による下部熱圏からの物質輸送(高濃度の一酸化窒素大気の輸送)が支配的となることがわかった。冬季高緯度域における下部熱圏から中間圏への一酸化窒素輸送量は、中間圏での惑星波の振幅と密接に関連している。中間圏における惑星波は、対流圏で生成されたものであるから、惑星波の活動度を通じて、対流圏大気循環と熱圏から中間圏への物質輸送とが関連していることが示唆される。さらに、高水平分解能(格子点間隔約140km)を用いて、大気重力波が下部熱圏での物質循環及ぼす影響についても調べてみた。その結果、下部熱圏においても、下層大気(対流圏)から伝播してきた大気重力波の砕波により生成される子午面循環が、下部熱圏での物質輸送にとって重要であることがわかった。以上のように、本研究結果より、対流圏大気循環変動と中間圏・下部熱圏大気循環変動が密接に関連していることが示された。
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Journal of Geophysical Research 113
ページ: doi:10.1029/2007JDOO8874