研究課題
前年度に引き続き、大気微量成分の光化学過程・力学による輸送過程を含んだ大気大循環モデルの数値積分を数年間実行し、中間圏・下部熱圏における物質循環に関する解析を行った。本年度は、中間圏における惑星波の振幅の年々変動や数十日周期の変動と物質輸送(具体的にはNO濃度変動)に注目し、北半球冬季について定量的な解析を行った。その結果、中間圏高緯度域では、惑星波の振幅変動に伴い、数%から10%程度のNO濃度の変動が引き起こされることが分かった。この変動は、惑星波に伴って生じる中間圏極域での鉛直流の強さと関連していることが分かった。また、中間圏における惑星波変動の影響は極域下部熱圏領域でも、僅かではあるが現れ、NO濃度が数%程度変動することも明らかとなった。高水平分解能モデル(格子点間隔約140km)を用いて、大気重力波が下部熱圏での物質循環に及ぼす影響についても、より詳細に解析した。熱圏領域では、中間圏に比べて短周期成分の重力波が卓越することがわかった。また、重力波の卓越周期は高度と共に短くなることも分かった。このことから、重力波による物質輸送には、高度が増すにつれてより短周期の重力波による輸送が重要であることが分かった。さらに、重力波の主な励起源は熱帯域の積雲対流活動であるので、熱帯域の対流活動と中間圏・熱圏の重力波活動度との関連を調べた。その結果、中間圏・熱圏低緯度域での重力波活動度は、対流活動の活発な経度帯で強いという相関が得られた。このことから、対流活動が活発な領域の上空の中間圏・熱圏では、重力波の活動も活発で、重力波に伴う物質輸送も顕著であるという結果が得られた。
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Earth, Planets and Space 61(in press)