研究課題
本年度は、低緯度域の下部熱圏領域における物質輸送・循環に注目し解析を行った。低緯度下部熱圏領域では、東進東西波数3の一日潮汐波(DE3)と太陽同期一日潮汐波の相互作用により、風速・温度分布が経度方向に波数4構造を持つことが知られている。解析の結果、酸素原子濃度などの大気微量成分も、これらの一日潮汐波に伴う子午面循環による輸送の効果により、同様の波数4構造を持つことが分かった。下部熱圏領域におけるDE3の振幅には、強い日々変動・季節変動が存在し、DE3のこれらの変動に伴い、酸素原子密度分布も激しく変動することが明らかとなった。これらの結果は、潮汐波に起因する風速変動が大気微量成分の経度依存性に強く結びついていることを示唆している。さらに、DE3の励起は、対流圏の積雲対流活動と関連していることを考慮に入れると、下部熱圏領域における酸素原子密度などの大気微量成分変動と下層大気変動(積雲対流活動変動)との関連性も示唆される。さらに、現在開発中の大気圏と電離圏との相互作用を考慮にいれた、大気圏-電離圏結合モデルを用いて、下部熱圏領域の中性大気変動と電離大気との相互作用について調べてみた。電離大気との相互作用が、中性大気微量成分分布に及ぼす影響について解析を行った。その結果、下部熱圏領域では、電離大気変動(電子密度変動など)による影響は小さいことが分かった。むしろ、下部熱圏領域における大気波動に伴う中性大気変動(温度、風速、酸素原子濃度など)が、ダイナモ過程を通じて熱圏上部や電離圏の変動に強く影響していることが分かった。
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Journal of Geophysical Research 114
ページ: doi : 10.1029/20-09JA014110