本研究では、宇宙からの降雨観測を行うために、人工衛星搭載用の降雨レーダとマイクロ波放射計が瞬時視野を共有する共通のアンテナを用いる降雨レーダ・マイクロ波放射計複合型降雨観測システムを将来型の人工衛星搭載降雨観測センサとして提案し、そのシステム設計を行うことを目的とする。平成20年度においては、昨年度に引き続いて、TRMM(熱帯降雨観測衛星)降雨レーダの受信機をマイクロ波放射計として利用することを試み、TRMM降雨データの解析を通して、降雨に起因すると思われる雑音電力と降雨強度ならびに空間の雨滴粒子密度のレンジ方向の積算値には、相関があることをハリケーンなどの観測例を通して検証した。また、昨年度から開始した降水物理モデルを用いた機械的走査型の降雨レーダによる降雨観測シミュレーションを通して、妥当な降雨レーダのシステムパラメータの値を決定した。降雨観測シミュレーションにおいては、レーダ方程式に基づいて、降水からの散乱と途中の降水による減衰を考慮して、衛星で観測される受信電力値を計算した。次に、機械的走査型の降雨レーダのシステムパラメータをベースにして、降雨レーダの観測時間の隙間を使ってマイクロ波放射計の観測可能な時間を積算し、その所要積分時間が確保できるかの検討を行った。この結果、共通のアンテナを用いる衛星搭載降雨レーダ・マイクロ波放射計複合型降雨観測システムが実現可能であることを確認し、そのシステムパラメータ(周波数、アンテナ開口径、ビーム幅、入射角、送信電力、パルス幅、パルス繰返し周波数、降雨レーダの所要積分パルス数、マイクロ波放射計の所要積分時間、受信帯域幅など)を決定した。
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