1.平成19年度の研究において、海洋大循環モデルで再現された20世紀後半における全球平均海洋熱膨張トレンドに関して、「海面風応力トレンドに対する力学的効果」と「海面熱フラックストレンドに対する熱力学的効果」を明らかにするため、海洋大循環モデルの強制項である風応力と海面熱フラックスのそれぞれ一方の変動のみを与えた2種類の歴史実験を1958年から2001年までの期間に対して行った。 2.海洋大循環モデルによる上記2種類の実験結果を使用して、1960年から2001年までの0-700mの全球平均海洋熱膨張トレンドを計算した。その結果、風応力の変動のみを与えた実験では+0.09mm/年、海面熱フラックスの変動のみを与えた実験では+0.19mm/年となった。平成19年度に実施した風応力と海面熱フラックスの両方の変動を与えた実験における全球平均海洋熱膨張トレンドは+0.26mm/年であった。したがって、20世紀後半における0-700mの全球海洋熱膨張トレンドの要因は、「海面風応力トレンドに対する力学的効果」が約30%、「海面熱フラックストレンドに対する熱力学的効果」が約70%であることが明らかとなった。また、全球平均海面水位上昇が加速した1993年から2001年までの海洋熱膨張トレンドに関しては、その80%が「海面風応力トレンドに対する力学的効果」であることも明らかとなった。 3.本研究結果は、観測資料から見積もられる20世紀後半の全球平均海洋熱膨張トレンドには、海面での加熱だけでなく、風応力トレンドに対する力学的応答が含まれていることを、海洋大循環モデルを使用した感度実験によって初めて示したものである。
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