研究概要 |
1,大気海洋結合モデルに海洋観測データを同化する準結合同化システムについて、長期的な同化計算を行うため、二酸化炭素の増加をデータとして与えることができるように改良した。 2,改良した準結合同化システムにより、1950〜2006年の気候変動の再現実験を実施し、その再現性について解析した結果、以下のような結果を得た。(1)海面水温と降水量の関係について、熱帯の広い範囲での1ヶ月程のラグ相関や西部熱帯太平洋での相関の季節依存性などが、準結合同化システムにより再現された。この関係は、大気モデルに海面水温観測値を与えただけで再現することは難しく、準結合同化システムでは大気海洋相互作用をより適切に再現していることを示唆する。(2)(1)の結果として、西部熱帯太平洋など熱帯域の広い範囲で降水分布が改善され、アジアモンスーンやインド洋上の風の再現性も向上した。(3)太平洋熱帯域における亜表層の高塩分水とバリアレイヤー、暖水貯熱量、貿易風の強度などについて、海洋データ同化システムと同様のラグ相関関係が見られることを確認した。 3,熱帯太平洋の暖水プールに関する熱収支解析を行った。その結果、亜表層の高塩分水の量と相関して鉛直混合による熱の消失量が変動しており、この変動が暖水プールの水温変動に影響を与えていることなどが示唆された。 4,来年度以降は、本年度改良し、大気海洋相互作用が適切に再現されていることが確認された準結合同化システムの計算結果を用いた熱収支などの解析を進めていくと共に、大気海洋結合モデルを用いた亜表層の高塩分水やバリアレイヤーに関するインパクト実験を実施していく。
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