研究概要 |
1,準結合同化システムによる1950〜2006年の気候変動の再現実験の結果を、昨年に引き続き解析した。その結果、フィリピン東方沖の降水、及び、循環場が、熱帯インド洋上の東西循環と相関し、エルニーニョ後のインド洋海面水温の昇温の影響を強く受けることについて、大気モデルによるシミュレーションでは再現されないが、準結合同化システムでは現実的に再現されることが明らかになった。また、大気の再解析データなどでは、インド洋海面水温のここ数10年の昇温に伴い、インド洋上の降水について偽の増加トレンドが見られるが、準結合同化システムでは、大気海洋相互作用を適切に表現することにより、このトレンドについても解消されることがわかった。 2,1997年のエルニーニョについて、準結合同化システムによる解析結果を用いた予報実験を行い、その発生と解消が1年程前から適切に予測されることを明らかにした。また、太平洋熱帯域の水温・塩分場がエルニーニョの予測にどのような影響を与えるかについて感度実験を行ったが、このシステムでは西太平洋の海面水温や表層塩分場とは関係なく、強いエルニーニョが発生するという結果となった。今後は2002年や2006年のエルニーニョについて、同様の感度実験を行い、エルニーニョ予測に対する塩分場の影響を検証する予定である。 3,海洋のデータ同化において、同化により水温場のみを修正して塩分場に修正を加えない場合、密度成層に不安定を生じ、鉛直混合が強くなるため、太平洋熱帯域表層の高塩分水の水温が低下してしまい、バリアレイヤーの形成が妨げられるが、水温と塩分の結合EOFモードを用いて塩分場にも修正を加えることにより、この問題が解決することを示した。
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