研究概要 |
吹雪が大気や積雪に対してどのような影響を及ぼすのかを明らかにするため,まず吹雪粒子からの昇華量に着目した.最終的には吹雪の物理モデルを構築して影響を予測する必要があるが,今年度は再解析データセットを入力条件として,経験式による吹雪粒子からの昇華量を全球で推定し,論文としてまとめた.地域によって昇華量は異なるが,北半球は南半球に比べて広域に昇華している様子が再現された. また,吹雪の物理モデル構築に必要な低温風洞実験に着手した・現有の1次元吹雪モデルを3次元に拡張して積雪分布を再現するためには,積雪の削剥・堆積量が風速や気温に対してどのように依存するのかを明らかにする必要がある.そこで気象条件を自由にコントロールでき,吹雪を発生させることが可能な低温風洞実験装置(防災科学技術研究所雪氷防災研究センター新庄支所雪氷防災実験棟)を利用して実験を行った.風速は8,10,12m/sと,積雪表面温度は-10,-6,-3,-2℃と変化させた.風速が増すにつれて削剥率は増し,また雪温が高くなるにつれて削剥率が減少する傾向が見られたが,来年度はさらに実験数を増やすとともに,他の雪温における削剥率を求める必要がある. さらに,吹雪の規模は積雪深や積雪密度といった積雪物理量にも依存していることから,積雪物理量の実態を把握するために,研究対象としているモンゴル・トーレ川上流域内のナライハ観測サイトに積雪重量計を設置した.これにより自動で積雪状態を把握することが可能になった.
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