研究概要 |
1.HFドップラ観測網の拡充強化と電離圏擾乱の広域連続観測の実施、および皆既日食に合わせたイベント観測 HFドップラ法による観測を、JG2XA(5,8MHz)波を用いて8局、JOZ2(6MHz)波、JOZ3(9.5MHz)波を用いて7局、JOZ(4MHz)波を用いて1局で連続実施し、伝搬距離とHF周波数に依存したさまざまな高度およびさまざま地域の電離圏擾乱現象を観測した。受信結果はデータベース化され、Webサイトを通じてHFドップラ観測コミユニティに準実時間で供給されている。その中の宮城県飯舘と熊本県阿蘇は、HFドップラ観測網の拡充強化のために平成21年度に新たに開設された受信局である。また、平成21年7月22日のトカラ皆既日食に伴う電離圏擾乱を観測するために、沖縄に、JG2XA(5,8MHz)波、JOZ(4MHz)波、JOZ2(6MHz)波、JOZ3(9.5MHz)波、さらにBPM(5,10,15MHz)波を利用した多周波HFドップラ受信局を設置して、京都大学チームと協同観測を行った。初期結果は学会で発表されている。 2.熱圏中の大気重力波伝搬に関する解析 熱圏大気中の大気重力波の振る舞いを規定する重要な要素の一つとして、散逸効果が挙げられる。その定量的議論のために、大気重力波の鉛直方向減衰率に注目して、数値シミュレーションとレーダー観測の両面から解析を進め、両者が満足のゆく合致を示すことから、シミュレーションに取り込んだ大気粘性、熱伝導、イオンドラグ等の係数モデルの妥当性を検証することができた。得られた鉛直方向減衰率は平穏時のベース値を与えるもので、これを基点として大気重力波の異常減衰を評価することで、熱圏中のエネルギー輸送・再分配過程における大気重力波の役割りや、その一つの帰結としての大気重力波スペクトルの構造の解釈に、明快な展望を与えることができた。
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