研究課題
太陽風物理の最重要課題の一つである高速太陽風の加速機構の解明のため、理論モデルへの制約を与える加速プロファイルを明確にし、加速効率を決定する太陽コロナの物理量と太陽風速度の関係の研究を行い以下の成果を得た。(1)太陽から0.1AUの距離において、これまでIPS観測の解釈に必要とされていたランダム速度の大きな影響を考慮することなく速度分布を調整することにより観測をほぼ完璧にシミュレートすることに成功した。これはランダム速度の一因となる大きな波動が存在しないことを示唆している可能性がある、(2)このシミュレーションに用いられた太陽風速度分布を0.3AU以内と以遠とで比較した結果、高速風領域において0.3AU以遠の太陽風速度は0.11-0.14AU付近に比べて100-150km/sほど速く、0.1AU以遠においても加速が継続していることが確認された、(3)高緯度コロナホール中の磁場強度Bおよび流管の拡大率fの変動は互いに逆位相のため、加速効率を決定する両者の比B/fは、それぞれの変動を打ち消し合い、IPSおよびUlyssesの観測した一様かつわずかに緯度依存性のある速度・緯度構造と似ることを確認した、(4)太陽活動極小期においては、太陽極磁場が強くなり、高速風領域が中低緯度近くまで張り出し、低速風は低緯度に帯状に分布する。しかし、今太陽周期極小期の2008年は異常で、極小期であるにも関わらず、高速風が両極に加えて赤道帯にも存在し、低速風はこれらの間の中緯度帯に分布している。そして、極磁場が前サイクルに比べ弱く、高速太陽風の占める領域の比率が小さく、高緯度高速風領域の発達には極磁場強度の影響が有ることが考えられる。
すべて 2009 2008
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Space Technology Japan 8(in press)
Advances in Geoscience (World Scientific Publishing Co., USA) 3(in press)
Advances in Geoscience (World Scientific Publishing Co., USA 3(in press)
Geophys. Res. Lett. doi : 10.1029/ 2009 GL03746(in press)