本研究の目的は、(1)塵帯電を決める物理過程の検証:太陽系内の太陽風/太陽輝度の空間的・時間的変動を詳細に取り入れて、塵表面の荷電量の変動を正確に推定し、その変動が惑星間空間での小さな塵の力学的挙動に与える影響を解明する。 (2)ダストトレイル塵からの物質供給の解明:彗星軌道に沿って発見されている大きな塵(ダストトレイル)から、昇華やスパッタリングで生まれるガス成分について定量的に検討する。特に、塵から作られた重元素成分が、太陽風の成分比に与える影響を解明する、ことである。 本年度の成果は、(1)については、 ○ 帯電過程に重要な役割を果たす、太陽風(特に電子成分の数密度、エネルギー分布)と太陽輝度(特に紫外線領域)を正確に記述するパラメターを検証し、それらの空間的(日心距離およそ0.1〜10AU)・時間的(数日間〜数年のオーダー)変動の様子を文献に基づいて明らかにした。これによって、惑星間塵の荷電量の時間・空間変動を解明するための基礎データが集積された。 ○ 定型的な惑星間塵の構成物質(シリケイト、グラファイト、水の氷)について、帯電量を求める計算プログラムを作り、塵荷電量の空間的・時間的変動を求めた。数ボルト〜数十ボルトの正電荷が一般的に達成されることが判った。 (2)については、 ○ ダストトレイルにおける塵のサイズ及び数密度を求め、トレイルの空間分布を推定した。一般的に惑星間の塵においては、塵が高温となると構成分子の昇華が起こり、また、太陽風のプロトンによるスパッタリングによって分子・イオンが発生する。このようにして、トレイルの塵から供給されるガス・イオンが、太陽風の成分に与える効果を検証し、その影響が小さいことを明らかにした。
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