本研究では、惑星間塵に関する物理現象の理解を深めるための理論的研究を進めている。惑星間塵の物理(軌道変化、衝突と破砕、ガス生成など)を理解することにより、惑星間塵の起源と進化研究の基礎データを蓄積することが可能となる。 本研究の一つとして、惑星間塵の軌道に関する理論研究を行った。結果として、太陽系内側のナノ粒子の予想される軌道は、guiding center近似で記述できることを私たちは発見した。すなわち、ナノ粒子は太陽風の流れにそって移動しているということができる。この条件が適用できる範囲においては、ナノ粒子の流れは、その電荷の変動に影響されないということが言える。 また、他の研究として、太陽を焦点とするケプラー軌道上を運動する大きいダスト粒子からの破砕物であると仮定した10nmサイズダスト粒子の軌道計算を私たちは行った。10nmサイズダスト粒子の軌道計算より、太陽から0.1-0.7AUの距離で放出されたダスト粒子は特定の条件により200から400km/sの速度にまで加速されることが分かった。 ターゲットへの高速度衝突は蒸気、陽子およびイオンの生成を引き起こす。別の研究として、ダスト同士が高速度で衝突する際に生じる電荷の量の計算を行った。ダストの衝突によって生成される電荷の総量Qは、質量と速度の3.5乗の積で求められることが研究からわかった。このように、宇宙船への衝突時にはダスト粒子は多量の電荷を生成する。これら電荷はプラズマ波観測装置によって観測される可能性があることが研究により判明した。
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