研究概要 |
本年度はオマーンオフィオライト北部フィズ岩体の地質調査ならびに構造と鉱物化学組成分布の解析を行った。その結果,フィズ岩体のマントルセクションに海嶺セグメント構造に対応する組成変化が検出された(村上ほか,2008)。セグメントの中心部は均質で部分融解度の高い融け残りかんらん岩からなり,末端部は部分融解度の低いかんらん岩と高枯渇岩が共存することが明らかになった。末端部の特徴は,中央海嶺下の部分融解と海洋プレート同士の衝上による再融解の痕跡を表わしている可能性が考えられる。次に,フィズ岩体最北部のマントルセクションの組成分布を検討した結果,新たな高枯渇岩の分布域が明らかになった。ハルツバージャイトとダナイトのカンラン石とスピネルの組成関係に2種類存在することも明らかになり,それらがハルツバージャイトの再融解によるボニナイトマグマの生成にともなうものと,ボニナイトマグマがマントルから地殻に上昇するときにハルツバージャイトと反応して形成したものに,それぞれ対応すると考えられる。苦鉄質〜超苦鉄質ダイクの分布と鉱物組成変化から,フィズ岩体最北部のマントルセクションの西部により未分化な斜方輝岩が,東部のモホに近い地域にウェブステライトが分布していることが判明した。貫入岩は,ボニナイトメルトが結晶分化しながら上昇する過程で結晶集積岩として形成したことが考えられる。来年度はさらに調査地域を広げながら,上記の仮説を検証して行くことを目標とする。
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