研究概要 |
平成21年度には,富山県の八尾町桐谷・立山カルデラ,三重県の大台町薗川,滋賀県の多賀町大君ヶ畑などで調査と試料採取を行った.これらの調査および試料解析の結果,次のような事項が明らかとなった. 1.桐谷には巨大な地すべりが多数大規模な地すべりが多数発達するが,これらの地すべりはこの地域に分布する岩稲累層の岩相・構造に規制されて発生している.すなわち,安山岩質火山岩および火山角礫岩層に挟まれて分布する凝灰岩層が変質し,スメクタイトを生じ,すべり面となり,その面が地形面とほぼ平行となる流れ盤構造の斜面で大規模な地すべりが発生している.地すべりの発生年代は約2500BPである. 2.立山カルデラの外壁を作る鳶山は,1858年の飛越地震の際に大崩壊(いわゆる鳶崩れ)を起こしたことで有名である.その際の崩壊堆積物は鳶泥と呼ばれているが,立山カルデラ内には鳶泥以外にも何層かの崩壊堆積物が認められる.そのうちの一つ(国見泥)に含まれる木片の14C放射年代を測定し,2265BPという年代値を得た. 3.薗川沿いに分布するせき止め湖堆積物の2層準に含まれる木片の14C放射年代測定を行い,上位層中の木片について20440,20820BP,下位層中の木片について20910BPという年代値を得た. 4.大君ヶ畑に分布するせき止め湖堆積物に含まれる木片の14C放射年代を測定し,345,360BPという年代値を得た.暦年変換すると,1470-1540AD,1560-1630ADの2つのピークがあり,地震が素因であるとすると,1498年の静岡県沖の地震,1586年の天正地震,1596年の畿内を中心とする地震などの可能性がある.
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