付加体において熟成度の高い地域から低い地域までをカバーするために、研究対象地域を、四国南部・静岡・房総半島の複数地域とし、泥質岩を採取して有機地球化学的分析を行った。今年度のビトリナイト反射率については校正を更に正確に行う必要があるため、最大古地温は参考値としH20年度に高精度で決定する。 (1)四国南部(高知県東部(室戸半島)〜西部(須崎)):古第三系〜白亜系;a.四万十帯西部(須崎-中村地域:228℃)の方が、東部(室戸-安芸地域:216℃)よりも、最大古地温と増温率が高い。有機物にとって高温である約240℃まで、付加体泥質岩にバイオマーカーが残存し、古環境情報を保持していた。四万十帯西部(須崎-中村地域)の方が、東部(室戸-安芸地域)よりも、陸源有機物およびバクテリアの影響が多い(供給源の違いによる)。 (2)静岡(静岡県東部(静岡市北西部)〜中部(宇津ノ谷)〜西部(島田市)):古第三系瀬戸川層群;a.有機炭素濃度と炭化水素ポテンシャルは北東部で低い。b.最大古地温は、150℃-200℃-240℃と北東部で高くなる。このことは「北東部で地殻熱流量が高かった」または「北東部で沈み込み深度が深かった」ことを示唆する。c.北東部で陸源有機物の供給が少なく、海底は還元的であった。 (3)房総半島(鴨川地域):古第三系嶺岡層群および新第三系安房層群;a.新第三系では、付加体よりも前弧海盆で石油根源岩ポテンシャルは高い。b.最大古地温は、古第三系付加体(嶺岡層群)で99〜212℃、新第三系付加体(安房層群)で68〜125℃、前弧海盆(安房層群)で57〜81℃を示した。MPI3とRoとの関係に基づけば、古第三系付加体(嶺岡層群)は増温率も高く、新第三系付加体は増温率が低くなる。これらのことは、古第三系から新第三系にかけて、この地域の地殻熱流量が減少してきたことを示唆する。
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